community cleaning work

日本では、定年後も「働く」という選択をする人が増えている。内閣府の「高齢社会白書(令和5年版)」によれば、65歳以上の就業率は年々上昇しており、特に男性では4割を超える。再就職先として注目されているのが「地域密着型の清掃業務」だ。特別な資格を必要とせず、地域との関わりも深く、心身の健康維持にもつながるとされている。

?️ なぜ高齢者に清掃業務が選ばれているのか?

① 生活リズムと合いやすい

清掃業務は「早朝のみ」「週3日」「午前中だけ」など、短時間勤務が多いため、自分のペースで続けやすい。

② 体を無理なく動かせる

日常的な掃き掃除、拭き掃除が中心で、特別な体力や技術を要する作業は少ない。高齢者の健康維持にもつながる。

③ 地域との接点が生まれる

作業中に近所の住民や子どもたちと挨拶を交わすことも多く、孤立を防ぎ、社会とのつながりを実感できる。


? 清掃業務を始めるステップ

実際に仕事として始める際の流れを、次のように整理できる。

▶ 1. 自身の体調と希望条件を整理

持病や体力の有無、働きたい時間帯や頻度を事前に明確にすることが重要。

▶ 2. 清掃内容の確認と選択

マンションの共用部、公園、学校、オフィスビルなど、場所によって求められる作業が異なる。自分に合うスタイルを選ぶ。

▶ 3. 地域の就業支援窓口を活用

シルバー人材センターや市区町村の就業相談窓口では、見学や体験会を実施している地域もある。

▶ 4. 道具や服装の準備

滑りにくい靴、作業手袋、帽子など、安全かつ快適に働くための装備は最低限用意しておくと良い。

? 客観データで見るシニア就業と清掃業務

厚生労働省の「高齢者雇用実態調査(令和4年)」によると、65歳以上の就業者のうち、清掃・管理・警備関連職に従事する人は約18.7%。この数値は、飲食・小売に次いで高く、安定したニーズのある分野であることが分かる。

職種高齢就業者の割合(%)
小売・接客22.4%
清掃・管理・警備18.7%
軽作業・配送14.9%

加えて、地域別にみると、都市部ではビル清掃、地方では公園・施設管理などニーズの幅がある点も特徴だ。


? 実際の声:70代男性の事例

東京・練馬区に住む73歳の男性は、週に3回、マンションの共用部清掃を行っている。

「最初は掃除の経験なんて自宅程度だったけれど、今では効率のよい清掃手順も覚えた。通勤時間もなく、体も動かせるので、健康管理にもなる。なにより、住民の方に“いつもありがとう”と声をかけてもらえるのが励みです。」

このような「やりがい」の実感は、仕事を続けるモチベーションにも直結している。


? 清掃業務の“見えない”メリット

一見単調に思える作業も、実はさまざまな効果をもたらす。

  • 認知機能の維持

     清掃では注意力・観察力が求められ、作業の順序や状況判断が脳を刺激すると専門家も指摘している(※参考:東京都健康長寿医療センター研究所)。

  • 精神の安定

     清潔な空間を保つ行為自体が心理的にも「整理されている状態」をもたらし、ストレス軽減につながるとされる。

  • 日常の達成感

     小さな範囲でも「自分がきれいにした」という視覚的な結果が得られるため、達成感が生まれやすい。

? 清掃は「役割」を再発見できる仕事

年齢を重ねる中で、「もう人の役に立てないのではないか」と感じることもある。だが、清掃という仕事は、地域や施設にとって欠かせない存在であり、目に見える貢献ができる分野だ。

また、業務のシンプルさと必要性の高さが両立しており、体力や技術に不安があっても、始めやすく続けやすいのが特徴である。


✅ まとめ:定年後の選択肢としての清掃業務

  • 清掃業務は、高齢者の体力・生活リズムに合った働き方が可能。

  • 第三者からの感謝や評価が得られ、精神的な充実も期待できる。

  • 公的な調査や現場の声からも、実際に多くのシニアに支持されている。

定年後の人生を「静かに過ごす」だけでなく、「地域と共に歩む」ものにするための一歩として、清掃業務は確かな選択肢のひとつと言えるだろう。

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